十津川探検 ~瀞洞夜話~
玉置神社祭日の覗き
   余の子供時代を顧みて思ひ出す。古色蒼然たるは玉置祭りの「ノゾキ」なり。お神酒徳利が6尺棒を飲み、芝居がかった動きのない、児の漫画にもない木版の画を配し、繰り返し現はるるよう紐にておろし、レンズにて参詣客に料金をとって覗かせる。節面白く、(但し今では噴飯物)伊藤公のハルピン遭難その他男女交代に唄ふ………六連發のピストルで打ち出す弾は侯爵の胸に中りてハルピン大騒ぎ………など。それを人々は、口あんぐり見たものである。後年、余、朝鮮京城にて朝鮮人のノゾキを見たが、形は小さく方2尺余り。然し、紐を引けば太鼓と鐘が鳴る仕准卜けあり。盛んに怒鳴っていたのを思ひ出す。その頃は映画も断然進歩し、その他の娯楽も進歩しありしに、思へば新旧の存在は面白し。

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