十津川探検 ~瀞洞夜話~
狸の腹鼓のこと
   古老の話を総合してみると、腹鼓と云ふ事があると云ふ。亡父が或る時、玉置山に泊まれる際、之を開いたとも云ふ。然し、ポンポンと云ふ明朗な鼓の音とは受け取れない。所謂、狸の腹鼓とは、狸の鳴き声でないかと云ふ話であった。或いは結局のところ、狸の鳴き声か、又は他の動物の声かもわからない。証拠を掴んだ話を聞かぬ。
注-はらつづみ-20年程前の山彦橋の対岸の上ミの森の中で毎日陽の暮れ方にポンポンという声が一週間程続き、はじめは何の鳴き声かしらと謂っていたが、田辺の方から來ていた炭焼きの人(60過ぎ)に東氏夫人が「何の声だろう」と聞いたら、直ぐに、「ありゃ、タヌキボシや」と請うた。そのためかどうか知らぬが、次の夕方からぴたりと鳴かなくなった。それで、「見破られたから止めたんだろう」と、笑ったものだった。なお、この田戸では狐・狸に限り、キツネボシ、タヌキボシという。

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