十津川探検 ~瀞洞夜話~
鼠が人の髪に巣を作りかけた話
   大字上葛川故島本盛吉医師は、若い時、大変猟が好きだった。立合川(タチアイゴ)に山狩りし、日が暮れてしまひ、野宿する事になった。ふと夜中、目が醒めた。何か頭の辺でゴソゴソする物があるからである。大胆な男であるから、じっと目をつぶって考へてゐると、一匹の鼠が同人の髪の乱れ(髷であった)を利用して、頻りに巣をかけようとしてゐたので、流石の同人もびっくりしたとの事である。或る本に平清盛の死ぬ前、同邸の飼へる馬のシッポに鼠が巣を作ったとあった。

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