十津川探検 ~瀞洞夜話~
鶏と四ツの徳
   昭和4年の頃、葛川鉱山を営む福島縣生まれの(會津の人)東京人にして、瀧口啓太郎と云ふ80餘歳の老人が我が家に止宿してゐた。この人の所持品の中に會津城攻略と云へば維新のことであるが、その時同人の家に宿泊した桐野利秋(薩軍)がくれたと云ふ『博物筌』と言う書物があった。前書の中にあった事をノートして置いたのが今ないので殘念であるが、その内に左(下記)のことがあった。
 鶏に四ツの徳あり。それは、鶏冠を存するは文なり、食を別つは仁なり、時を告げて違へざるは義なり、足にケズメを有するは勇なり、以上の四ツである。
注-・葛川鉱山 北又谷の奥、五万分の一図「北」の字の一軒家の符号のあるところ。10年ばかり銅を掘っていた。

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